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自家製麦芽を作る

Published by mabo under on 22:51

 ●何故、麦芽を使うのでしょう?

『このビールは麦芽100%で造られています。』
どこかのTVコマーシャルで聞いた事ありませんか?

なんで麦芽でなきゃいけないのかな? ビール麦ってあるけど、これもだめ?
麦芽が体にとっても良いから使っているのかな?

こんな事を考えたことはありませんか?
実は、麦芽にはとても神秘的な力があったのです。ビールは、麦の糖分をイースト菌(ビール酵母)が食べる事によって造られます。
でもビール麦も発芽した麦(麦芽)も、そのままでは糖分といえるほど甘いわけではありません。

この糖分を麦から抽出する為には、麦のデンプン質を糖に変える 『デンプン質分解酵素』というものが必要になります。
しかし、発芽前の大麦には、このデンプン質を分解する為の酵素は殆ど含まれていません。
この分解酵素は、麦が発芽する時に自らの力で生成されていくのです。
ですから、ビールを造るうえで、麦芽化はとても重要な作業になってくるわけですね。

● 以下の手順にしたがって麦芽を作ってみましょう。

1.始める前の準備
2.浸漬  
3.発芽
4.乾燥
5.仕上げ

1.始める前の準備

・週間天気予報をしらべる。

1日目
2日目
3日目
4日目
5日目
晴れ
晴れ
晴れ
1221
1322
1423
1524
1424
浸漬開始
浸漬/発芽



6日目
7日目
8日目
9日目
10日目
晴れ
晴れ
晴れ
晴れ・・雨
晴れ
1323
1223
1123
102
1022
発芽/乾燥
乾燥/仕上げ


上の表は10月に麦芽を作った時のものです。
まず、週間天気予報で1週間の天気と気温を調べます。
モルティング開始から発芽期の気温、乾燥の始まる7日目頃の天気を知ることにより作業をスムースに行う事が出来ます。

良い麦芽を作る為には、発芽終了時、一気に乾燥させる必要があります。
気温20℃以上のときでは、発芽を止める事が半日遅れただけで、芽は殻を突き破って伸びてしまいます。
当然、雨の日には強制乾燥(乾燥の工程を参照)となるわけですが、約3kgの麦芽を素早く乾燥させる為には、天日干しが一番有効です。(天日だけで麦芽乾燥を終了するには約5日間くらいは掛かる)

・発芽に適した温度

発芽に適した温度は、一般に15℃から20℃と言われています。
この温度で発芽させるメリットは、麦芽の生長がゆるやかな為、均一な安定した芽の長さが得られる事と、ゆとりを持って乾燥の工程に入る事が出来る事です。
私の経験では、真夏の30度を超える時期でも問題なく発芽しました。
しかし高温下での発芽は、麦芽の生長が早過ぎて、芽の長さが極端に不ぞろいになってしまいます。その半面、天日乾燥は非常に楽です。


・発芽に掛かる日数


発芽に掛かる日数は、麦の状態や気温、場所によって変ってきます。

参考迄に、温度(最高気温)と発芽の日数は

最高気温30℃(9月始め)  → 1~2日
最高気温24℃(10月始め) → 3~4日
最高気温15℃(11月始め) → 6~8日

・ホームモルティングに使う道具


直径45cm×深さ16cmくらいのタライとそれに入るザルを使います。
この大きさで約3kg位の麦を入れることが出来ます。
下の写真で見るとまだ入りそうにも見えるのですが、給水後の麦の膨張や発芽後の毛根の成長を考えるとこれでもいっぱいいっぱいです。
余裕をもって、倍くらいの容量を確保することをお薦めします。

  
 100円ショップで買ったザルとタライ

2.浸漬



3kgの麦をザルに入れ水を流しながら良く洗います。
40時間~48時間(モルティング時の気温による)水に漬けこの間、一日3回酸素吸入の為、笊ごと引き上げ水を替えます。
針がスーット入るくらいでOK!

※注意 水洗いをした時浮いてしまう麦を捨てないで下さい。 当初、浮いている麦は発芽しない「ダメな麦」と思っていました。しかし、数日後捨てた麦がゴミ箱の中で発芽していたんです。

★ポイント

浸漬時間や水を替える回数は、あまり深く考えなくても大丈夫みたいです。
仕事の都合とかで、時間どうりうまくいかない場合もありますが、発芽しなかったことは一度もありません。

3.発芽


桶の水を抜いて、ダンボールの箱に入れ、上に新聞をかけておきます。(暗いところが良いんです。)
1~2日で沢山の毛根が見られるようになります。
2日目くらいになると麦が発熱し温かくなります。
霧吹きなどで乾燥しないように朝晩2回水をかけます。
毛根が絡み合いザルの形で固まってしまうので、軽くほぐしながら満遍なく湿り気を与えます。
芽の成長具合を見るため毎日欠かさず、朝晩カッターナイフで真中から切っては長さを確認します。(温度が高い時は、数時間の内に殻を突き破って芽が出てきます。)
芽の長さが3/4倍から1/1倍になったところで発芽終了!

● 芽の長さとは

芽の長さは麦を真中からカッターナイフ等で切らないと分かりません。
初めてのホームモルティングの時、この事を知らずに観察していたら頭を突き破って芽が出てきてしまいました。
の写真のように真中から割ってみると、芽の長さは2/3の長さになっています。


   見た目では解らない       殻に添って芽は伸びて行きます


≪芽の長さ≫

□ 淡色系のビールで3/4から1倍

たんぱく質を分解するアミノ酸の量が少ない為プロテインレストが必要になります。
(麦汁の歩留まりは良い)

□ エール系のビールで1倍から1.5倍

デンプン質の量が少なく歩留まりは悪くなるものの、濁りの元となる複雑構造のタンパク質が少ないので澄んだビールを造ることが出来ます。


★ポイント

発芽終了時期が近づいてきたら、霧吹きでの水やりは控え目にしましょう。
あまり湿気が多いと初期乾燥時に時間が掛かり過ぎ、香ばしい香りどころか、変な匂いがついてしまいます。
乾燥しない程度の軽めの霧吹きを!

4.乾燥

①天日乾燥


レジャーシートを広げて天日乾燥。
でも、強風には注意してくださいね!

朝8時から午後3時まで干して、秋の晴天で(10月始め頃)5日ほど乾燥に掛かりました。
ザルに入れて干したものもありますが、風通しが良い為かシート乾燥よりは渇きが早いようです。
網戸を利用している方もいるようです。

②ファンヒーターで乾燥

 

乾燥時にどうしても天候に恵まれない時、また天日だけでは乾燥しきらない時、寒い時期などは、ファンヒーターを利用して乾燥します。
ダンボールの箱を直径30cmのザルが入るようにくり抜きます。
内側には扇状にダンボールを貼り付け、温風が集まるように加工します。
真中には補強用に柱を一本立てます。
直径30cm×深さ105cmのザルには約3kgの麦芽を入れることが出来ます。
しかし、湿気を多く含んでいる時などは、一度に1.5kgづつ、2回に分けたほうが早く乾燥が進みます。
これ、結構気に入ってるんですよ! ^_^

乾燥の工程を布団乾燥機や衣類乾燥機を使っている方もいます。私も衣類乾燥機を使おうと思っていたのですが、家族に猛反対を受けてしまいました。
ファンヒーターでの乾燥も、ナマ渇きの時などは嫌な匂いがしたりします。

※注意 電気器具を使って乾燥する時、麦の温度を上げ過ぎないで下さい。
麦が発芽する工程において、タンパク質分解酵素が作られます。麦芽乾燥時に温度を上げ過ぎると(長時間高温が続く)、せっかく作られた分解酵素の活動を停止してしまいます。乾燥の温度は50℃くらいにすることをお薦めします。(淡色系スペシャルモルトを作る時、150℃で10分くらいローストしますが、これくらいだとまだ酵素は活動します。)

★ポイント

麦の水分量は、“5%以下になるように乾燥するのが良い” とされていますが、現実問題として測定器等を持たない素人には無理と考えます。
私の場合、最終的にファンヒーターで駄目押し乾燥を繰り返し、麦に微かな香ばしさが出て来たところで終わるようにしています。

5. 仕上げ


充分に乾燥した麦芽にはまだ毛根が付いています。最後に、毛根を取り除き麦芽を仕上げます

                ↓


これも100円ショップで買ったステンレスのザルです。
毛根の付いた麦芽をステンレスのザルにこすり付けるように手で廻します。
これを何度か続けて行くと毛根が網の目から外に落ちて行きます。
原始的ですが今はこれでやってます。


麦芽完成です!

出来上がった麦芽はベースモルトとして使います。



 

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