エアギャップ発電機の製作
Published by mabo under 01. 手作り風力発電 on 22:34風力発電を自作しようとした時、一番最初に考える事。
「発電機は、どうしたら良いか?」
市販されている発電機の中で一番入手しやすいものといえば、自転車用ハブダイナモ。
確かに自転車用ハブダイナモなら、新品でも3000円ほどで購入できます。わずか6V(交流)-2.4Wの出力でも、上手く風を拾う事さえ出来れば、低回転からでもバッテリーに充電する事も可能です。
耐久性、耐水性の面でも自転車で実証済みですからまったく問題はありません。
しかし、「もうちょっと上」を目指したいと思うと、その「もうちょっと上」の発電機がなかなか見つからないんです。
そこで、手作り派がみんな作っているエアギャップ発電機を製作する事にします。
●材料取り
まず図面を書きます。
作った発電機が20cmの鍋に入るように設計!
実は、入れ物は何でも良いのですが風力発電1号機の発電機完成後、発電機を収めるものが見つからず、1ヶ月以上ホームセンター廻りをしていた事がありました。意外に適当な物が見つからなかったんです。
発電機のケースとして適しているものは、FRPなど絶縁材を使ったものが良いらしいのですが・・・
電気系は度素人なものでよくわかりません。ただ何となく静電気を帯びるプラスチックは如何なものか?(根拠はない)
また、ホームセンターで見かける容器は、PP樹脂(ポリプロピレン)を使っているものが多く、PP樹脂は太陽光を1年以上浴びると、手で砕けてしまうくらいの風化が進みます。風化したPP樹脂は、嫌な臭いを発するのでとても使う気にはなれませんでした。
僕の場合、1号機からアルミ鍋を使い始め、特には問題がなかった為(比較するものが無いので解らない)それ以来アルミ鍋をケースとして使っています。
では、製作開始です。
まず最初に、発電機の本体部品を切り出していきます。
右画像のように、躯体となる3mm厚のアルミ板が2枚(前・後)
ローター板2枚(t3.2mm鋼板を研磨仕上げで2.2mmへ)
ローター板に取り付けるマグネットガイド2枚(4mmシナベニヤ)
ステータ用台座1枚(4mmシナベニヤ)
他、組み付け部品は市販品を利用しました
●ローター
ローター板に取り付けるマグネットガイドを防水を兼ねて塗装します。
研磨でそりの修正と軽量化をした鋼板にエポキシ樹脂系接着剤でマグネットガイドを固定し、世界最強のネオジム磁石をN・S・N・Sと交互に接着していきます。
注:接着固定の終了したローター板2枚は絶対近付けないよう注意して下さい。なにせ世界最強のネオジム磁石ですから誤ってくっつけてしまったら、離す事は容易ではありません。下手をすると作り替えの恐れもあります。(※組立てまでは、新聞紙を厚めに重ね2枚をくっ付けておきます。外す時は横にスライドすれば外れます。)
この時使用するネオジム磁石は、僕が作る殆どの発電機にφ15×t5を使用します。(1号機はφ17.5×t5/貰ったもの)
ネオジム磁石の値段は、大きければ大きいほど、厚ければ厚いほど、磁力も強く、値段も高くなります。そんな中、たぶん一番の売れ筋なのか、このサイズが磁力の割には一番安く購入する事が出来るからです。
それと、コイルを巻く際に、巻き始めの内径はマグネットより大きくしなければいけませんから、マグネットの径が大きくなればなるほど、コイル内径も大きくなり、同じ巻き数なら、コイルの入るスペースも沢山必要になってきます。そんな訳で、φ15×t5の選定となりました。因みに、購入時の価格は1個160円くらいでした。
●ステーター
左は、完成したステーターです。
ローターの所でも説明したように、使用するネオジム磁石の径よりコイル内径が大きくなるように、縦・長手方向は18mm(上下+1.5mm)から巻き始めました。
使う銅線はホルマル線(ポリエステルエナメル線)でφ0.45とφ0.6を使用して発電機特性により使い分けています。
コイルは、線径が太ければ太いほど大きな電流が、巻き数が多ければ多いほど高い電圧が生まれます。
同じスペースにコイルを埋め込む場合の特徴としては、
1.線径が太い(2に対し)と巻き数が少い ⇒ 高速回転型
低速回転では電圧が上がらず、バッテリー充電電圧には至らない。
充電電圧に達した後は、2にくらべ充電電流は大きくなる。
2.線径が細い(1に対し)と巻き数が多い ⇒ 低速回転型
低速回転からバッテリーに充電開始する。
1が充電する回転数で比較すると、充電電流は小さい。
それでは、線径の細い方が低速から高速まで安定して充電されるはず!
だったら、パワーを無視しても細い線径を選択した方がベストだ、と思って1号機には迷わずφ0.45のコイルを使用しました。
手作り風力発電1号機 15.5V×3A ⇒ 46.5W(実)
これに習って2号機もφ0.45でコイル作成。ついでに余ったφ0.6も使って予備を作ってみた。
テストしていくうちに、φ0.45コイルに欠陥が・・・
1000回転 ・ 1100回転 ・ 1200回転と回転数を上げていくとφ0.45コイル使用のステータが発熱し始め、最後にはダイオードがパンクしてしまいました。(手で触れないくらいの発熱)
そんな訳で、今ではφ0.45コイルは多翼型で立ち上がりが早く、回転が上がらない風車向けとして、φ0.6コイルは強風の時に活躍するハイパワー型として使い分けをしています。
コイルを巻く時には、右画像の巻き治具を使います。プラスチック樹脂を削って、押さえ板には30cmの物差しを削って作りました。
巻き幅にもちょっとした工夫があるんですが画像では解りませんよね。
たとえば、φ0.45のホルマル線の仕上がり直径はφ0.51(被服部含)あります。
4mmのステータ板に収める為には、巻き始め一段目に7回巻くとして、きっちり巻くと0.51×7=幅3.57mmとなります。しかし2段目の一回目には、ホルマル線が1段目の7回目と6回目の間(谷)に乗ってしまい、2段目は6回しか巻けない計算となります。そこで、2段目以降も7回ずつ巻ける様ホルマル線の半径分0.225を足して、巻き冶具幅3.825+余裕スペースで3.9mmとしました。
そこまで、遣る必要があるかどうかは別として、風力発電1号機のコイル一個120回巻きから3号機用コイル136回巻きが生まれたわけです。
ステータ板も防水性と耐久性を高める為、塗装をしておきます。
巻き上がったコイルをなるべく膨らまない様、1~2個づつ押さえながらエポキシ樹脂系接着剤で固定していきます。
この発電機の名前である「エアギャップ」は、このステータ板の厚み次第で能力が変わってしまいます。いかに薄く、そりがなく作るかがこの発電機の最大のポイントです。
ですから、エアギャップ発電機の一番重要かつ時間の掛かる作業なんです。
■ 組立て
3mm厚のアルミ板に、6角支柱とステータ調整用ボルト・ナットを固定します。
中心には、ベアリングホルダーセットを固定し、シャフトを立ち上げておきます。
※6角支柱・ボルト・ナットはステンレス製(ローターには強力な磁気が発生してる為)
スチール製の6角支柱やボルトを使用するとコギングの原因になります。
↓ ステンレス製のシャフト
ローターをセットカラーに固定し
中心のシャフトに固定します。
セットカラー(自作品)⇒
次に、ステータを先に付けておいたボルト・ナットで上下位置を調整し固定。2枚目のローターを冶具を使いゆっくり下げていきます。
画像には見えませんが、1枚目のローターと2枚目のローターの間にこれ以上近づかないようにアルミ(ステンレスワッシャーでも可)のスペーサーが入っています。
★慎重にローターのギャップを詰めていかないとステータを挟んで壊してしまうことがあります。2枚目のローターをゆっくり下げる冶具等を用意しないと難しい作業になってしまいます。
後は、3mm厚アルミ板に2個目のベアリングホルダーセットを固定し、ボルトで固定して終了となります。
★ 追記:コイルの配線
左が三相交流の配線。2個飛びでコイルを繋いでいきます。
それぞれ最後のコイルの出口を短絡して終わります。
右が単相交流の接続です。コイルを直列に繋ぎます。
僕の持つ風力発電の本には、三相交流の方が効率が良いと書いてあリました。素直な僕は何も考えずこの方法で発電機接続を行っています。